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    論壇講評「私の3点」(読売新聞10月27日付文化面)

    読売新聞10月27日付文化面に掲載された論壇講評「私の3点」は以下。

    ① 木村幹「朝日報道は実際、韓国にどのような影響を与えたか」『中央公論』2014年11月号
    ② 池内恵x山形浩生「「イスラーム国」に集まる人々」『公研』2014年10月号
    ③ 有田芳生x北原みのりx山下英愛「私たちの社会は何を「憎悪」しているのか」『世界』2014年11月号

     今月は、朝日新聞の誤報に関する特集が多く組まれた。池に落ちた犬を叩けと言わんばかりのものも多く散見される中、日韓関係史が専門の木村氏は、①で朝日新聞報道が韓国に与えた影響を実証的に分析している。同氏は、その報道が吉田清治証言の周知や慰安婦=挺身隊という等置に寄与したものではないとする一方、1992年1月の日韓首脳会談直前にスクープされた「軍関与を示す資料」が、日本政府による「闇雲な「謝罪外交」」につながり、基本条約で決着済みとする立場から逸脱して日韓が対立を深める構造の起点となったと見る。
     ②は、イスラーム国を歴史・思想的に掘り下げる対談。やることは無茶だが、コーランに依拠し、反体制派の若者の自発性を引き出す9・11後のイスラーム運動の広がりに対し、「がん」の類推による外科的な対応より、「ミクシー」の盛衰に見て取れるような情報学論の視座が有効と説く。
     ③で有田氏は、現在のヘイトスピーチの背後に、戦後の日本がよく知らない加害や被害の経験があるとし、「経験を欠いた欲望が無闇に亢進する」(藤田省三)抑制なき時代の到来に警笛を鳴らす。
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    毎日新聞朝刊「核心 世界化する欧州危機」(2011年11月28日)

    共同通信配信で以下をはじめ各紙に掲載された拙稿です。
    「核心 世界化する欧州危機 -盛り上がらぬ国際的協調」(毎日新聞朝刊、2011年11月28日)
    「世界化する欧州危機 -傍観の余裕ない主要国」(北海道新聞朝刊、2011年12月9日)(共同通信配信)


     ユーロ危機は着実に深まってきている。対岸の火は、回り回って日本の地方に
    も波及する。グローバル化という現象は、好む好まざるにかかわらず、そういう
    ことを意味するのだ。
     ギリシャの国家的な虚偽会計に端を発したユーロ危機は、スペインやイタリア
    をも火に包んだ。これらの国では政権が交代したが、事態は一向に改善しない。
    それは、問題が構造的であることを示唆している。
     これからどうなるかは、本当のところは誰にも分からない。しかし、やがてフ
    ランス国債の格付けが切下げられれば、フランスの支援国としての立場が怪しく
    なり、ギリシャ等への支援策、危機への解決策として提示された欧州金融安定基
    金は立ち行かなくなる。というのも、その基金は最上級のフランス国債格付けと
    それゆえの低い金利を前提としたメカニズムであり、高い金利を払うとなればそ
    の根本が揺らぐからである。
     いきおいドイツに衆目が集まる。しかし欧州最強の経済大国であるドイツです
    ら、独力ではユーロ圏全体を救済できない。自国の国債格付けが切り下がるリス
    クを背負う気もない。他方、国際通貨基金(IMF)や欧州中央銀行の腰も重い。
    前者は多国間にまたがる機関で協議に時間がかかり、後者はインフレ退治に目が
    行きがちで財政的支援には向かない。こうして、ギリシャなどを切り離し、ユー
    ロ圏を縮小再編する過激なシナリオが現実味を帯びてくる。
     悲観的シナリオが優勢になる根本的原因は、成長戦略が描けないことにある。
    南欧諸国の多くは競争力が欠如し、このまま緊縮財政を貫徹しても経済を引っ張
    る成長セクターが伸びていかない。
     何年たっても経済が好転しないと分かれば、どの国民もついていかない。政治
    は不安定になる。そうすると借金返済の持続性が疑われ、国債への信任がますま
    すなくなるという悪循環に陥る。
     EUは金融監督を強化し、その意味で危機の中でも統合は続いている。それに
    より、銀行の財務体質を強化し、国債危機が銀行危機へと本格的に波及するのを
    防ごうとしている。けれども、これがマクロ経済的に正しい結果をもたらすかど
    うかは不明だ。ただでさえ、ギリシャなどへの借金の棒引きで経営が苦しい中、
    さらに銀行が自己資本比率を増やし、財務を改善しなければならないとすると、
    当然に貸し渋りになるからである。
     近年のアジアの成長を支えた要因には、中国からEUへの輸出増やEU銀行団
    のアジアへの貸し付け増がある。欧州内の貸し渋りは中国からの輸出を鈍化させ、
    欧州外への貸し渋りはアジアでの生産の鈍化を招くに違いない。
     中国をはじめとするアジアの成長鈍化は、やがて部品のやりとりなどでもうけ
    ている日本の町工場にも影響するだろう。
     相互依存の進んだグローバル化時代に、一国で防火壁を張り巡らせることには
    限界がある。必要なのは国際的な政策協調による火消しだ。にもかかわらず、日
    米欧ともに内向きであり、協調の機運は盛り上がらない。中国などの新興国はま
    だ発展途上で力不足なのが実情だ。
     岐路にいるのは欧州だけでなく、日本を含めた世界経済そのものなのである。
    対岸の火事として、傍観を決め込む余裕はない。

    読売新聞文化面「ヨーロッパの行方」記事(2011年12月5日)

    以下が、読売新聞文化面の論点スペシャル「ヨーロッパの行方」に2011年12月5日に掲載されたインタヴュー記事「統合の利、今も大きい」です。


     EUが実存的危機、つまり生存が問われる危機にあることは否定できない。
     暗い見通しを言えば、経済的危機が社会・政治的危機に転じていく恐れがある。各国が緊縮財政をとり、年金や社会保障を削って国民の生活レベルを下げると、それはEUのせいとなり、市民の間でナショナリズムが高揚する。ギリシャのような国で「借金を返さないことが正義」とする市民的不服従の運動が生まれるだろう。他方、財政が健全なオランダでは、、既に右派政党から「ギリシャをユーロ圏から除外しろ」という意見だけでなく、ユーロ自体に反対だと主張が出始めている。
     EU域内で、自らをまず「ヨーロッパ人」と認識する人は5%に満たない。一番多いのが「国民+ヨーロッパ人」という自己認識。単に「国民」と認識している人たちも多い。ドイツ人がギリシャ人を「同胞だから助ける」というユーロ・ナショナリズムの感覚は極めて弱い。
     しかし、中枢国のドイツでは、南欧の人たちを「パーティーばかりしている困った連中」という偏見でうんざり眺めつつも、政局レベルで「だから切り捨てろ」という主張が優勢になっているわけだはない。そこがまだ救い。域内単一市場の維持が利益につながることや、ドイツ人やフランス人がイタリアに多くの資産を持っていることなど、南欧諸国を支援する実際的なメリットもある。独仏が「欧州統合を前に進める」という政治的意思を持ち続ける限り、危機は乗り越えられる。

     EUは経済的観点だけで捉えるべきでない。私は三つのPで考える。プロスペリティー(繁栄)、パワー(権力)、ピース(平和)。プロスペリティーは確かに危機にあるが、他の世界と対峙する時のパワーとして見れば、EUの枠はなお有益。ドイツといえども一国だけで世界を動かすプレーヤーにはなれないのだ。ピースについては、過去60年、統合の歩みを進め、現に平和を実現してきた歴史がある。こららの要素を考えれば、統合のメリットは今も大きい。

     理念から見れば、EUには補完的原理という考えがある。「より小さい単位が自らの目的を達成できる場合は、より大きい単位は介入してはならない」とする消極的原理と、「小さな単位が自らの目的を達成できない場合は、大きな単位が介入しなければならない」とする積極的原理からなる。もともと軍隊の正規軍と予備軍の関係を指し、のちのキリスト教会の小教区と大教区の関係、市民社会と国家の関係に適用され、今は加盟国とEUの関係に適用されている。この補完的原理は、経済危機にあっても堅固に生きている。EU諸国は一国で達成できない三つのPをEUに託してきた。今後もそうあり続けるだろう。
     
     危機の今、EUに学べというと滑稽に聞こえるかもしれないが、EUの域内市場形成の歩みは、環太平洋経済連携協定(TPP)など、多国間の貿易自由化に直面する日本にも貴重な知恵を与えてくれる。
     EUは1年に5000もの会合を開く濃密な協議体だ。話し合いを重ね、欧州共同体(EC)だった1968年に関税をゼロにし、87年に単一欧州議定書で非関税障壁の撤廃を目標化した。そこで目指したのは、競争的規制撤廃ではなく協調的再規制。交渉の過程で、例えばデンマークは、自国の厳しい環境・食料安全基準を維持し、域内全体の規制レベルを引き上げる原則を他の国に認めさせた。
     こうした経験が欧州に蓄積されていることを忘れては、もったいない。

    朝日新聞文化面「ニュースの本棚・EUとユーロの行方」

    ニュースの本棚 EUとユーロの行方 遠藤乾さんが選ぶ本
    朝日新聞2011年11月20日朝刊文化面
    http://book.asahi.com/reviews/column/2011112000005.html


    ■グローバル化を管理できるか 

     欧州統合の父とうたわれるジャン・モネが、1929年の大恐慌で破産しかけた金融屋だったと知る人は少ない。彼は「金融は政治の文脈で捉えるべき」と自伝で書きのこした。
     ユーロ危機。それは遥(はる)かかなたの経済問題に映る。しかしユーロの歴史は、極めて生々しい政治ドラマでもある。
     デイヴィッド・マーシュが『ユーロ』で追うのはそのドラマだ。この英経済紙の元記者は、ドイツとユーロのベテラン観察者だ。膨大な数のインタビューから、ユーロ史を活写する。
     ユーロは、経済的には、資本が自由に世界を駆けめぐるグローバル化に端を発する。これは、1980年代に開けてしまったパンドラの箱である。結果として脆弱(ぜいじゃく)な国の通貨が次々と襲われ、地域共通通貨、つまりユーロによる安定が志向された。
     他方政治的には、当時西ドイツが差配していた通貨政策に、フランスやイタリアが関与するという権力闘争でもあった。その闘争が実ったのは、ドイツ統一ゆえである。強大なドイツをヨーロッパ通貨という枠で縛るという大義が力をもった。

    ■醸成された危機 
     通貨統合を定めたマーストリヒト条約はそうしてできた。妥協の産物である以上、欠陥があるのは当然だった。通貨を共有できる限り、他国はドイツの言うことは何でも聞いた。財政は自己規律、というルールはこの時にでき、のちに破られた。やがてドイツの競争力だけが突出し、南北で富が偏在しはじめた。危機はそうして醸成された。この経緯は、ユーロ専門家である田中素香の『ユーロ』がわかりやすく説明している。
     ギリシャ発の国債危機は銀行危機と連動し、いまや政治危機となった。終息したかにみえる時期は、小休止でしかない。危機は世界市場に内在する。
     ラグラム・ラジャン『フォールト・ラインズ』(新潮社、1995円)は、市場の危機分析に、いまの日本人にとってもっともわかりやすい地質学のメタファー「断層」を持ち込んだ。
     世界化し強大化した市場は、隠れた断層を見つけだしては拡張し、近くの断層と連動させる。
     EUの断層はいたるところに見いだせる。北欧と南欧。経済専門家主導の政府と議会・民衆。それは緊縮財政と社会保障の断層でもある。

    ■国内外、走る断層 
     もっとも深い断層は、ナショナリズムを飼いならしたはずのEUでも、国家間に走っている。
     ドイツと他国の国債利回りの差、いわゆるスプレッドは、市場が国家間の断層に打ち込む楔(くさび)だ。ユーロ加盟国は、否(いや)が応でも「国」を再認識する。
     また、通貨統合の維持のために要請される緊縮財政は、ユーロ加盟国内の格差を広げる。これは、萱野稔人『ナショナリズムは悪なのか』が日本の文脈で論じるように、貧困に陥った同胞を救え、というナショナリズムにつながりやすい。
     今後EUでもナショナリズムの再興が観察されよう。国家は岩盤のように露出する。ただし他方、グローバル化もまた元気で、資本移動の自由化というパンドラの箱はぱっかり開いたまま。日米含めどの国も、この資本の力を制御できていない。
     国家も世界もグローバル化を規制・管理できない中、曲がりなりにも、地域共同でそれを管理しようとする試みであったEUは、いま厳しい岐路に立たされている。まだまだ続くドラマを注視したい。

     ◇えんどう・けん 北海道大教授(国際政治) 66年生まれ。編著書に『ヨーロッパ統合史』『グローバル・ガバナンスの歴史と思想』など。

     ★この記事に関する関連書籍
    ユーロ 著者:デーヴィッド・マーシュ 出版社:一灯社 価格:¥3360
    ユーロ 危機の中の統一通貨  著者:田中素香  出版社:岩波書店 価格:¥840
    フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く 著者:ラグラム・ラジャン 出版社:新潮社 ¥1995
    ナショナリズムは悪なのか 新・現代思想講義  著者:萱野稔人  出版社:NHK出版 価格:¥777

    朝日新聞オピニオン面「耕論・ヨーロッパが壊れる」掲載記事

    ユーロ危機に関するインタヴューが記事になりました。
    朝日新聞2011年11月12日朝刊「最大級の危機 でも生き残る」
    (デジタル版 http://digital.asahi.com/20111112/pages/shasetsu.html


     EUの存在自体が問われるような危機です。もうEUはだめだという論者もいるし、ヨーロッパは統合など余計なことをしたという人もいる。でもEUが崩壊するとは思えません。
     危機はギリシャからイタリアに飛び火しました。深刻です。ただこの先、条件のいい国だけで「ミニ・ユーロ圏」を構成するような縮小再編はありえても、ユーロ自体はあらゆる手段を使って維持しようとするはずです。
     第2次大戦後に本格化した欧州統合は、60年以上にわたって常に危機に直面して来ました。危機のたびに迷走し、迷走しながら進んだ。欧州統合の歴史とは偉大な政治家とグランドデザインの歴史ではなく、危機と迷走の歴史です。
     1960年代半ばにはフランスが一時離脱し機能がマヒするという事態が起きました。90年代初めにはソロス率いるヘッジファンドに投機的な攻撃を仕掛けられ、ポンドやリラが離脱するという通貨危機もあった。冷戦終結も大きな危機でした。巨大な統一ドイツを抱えざるを得なくなり、迷走した。今回の危機は統合史の一コマであり、その中の最大級の危機と言えるでしょう。
     EUは「みんなで決めた」というより、「機能すること」で続いてきた政治体です。簡単に言えば、みんなの役に立っている間は、不満は出てこない。
     実際、EUに加盟しユーロになって、豊かになり、他国や市場に対して一国では行使できない影響力を手にした国は多い。でもうまくいかなくなったら、民主的な正統性が薄いぶん、とたんに弱いところが次々出てしまう。
     よく言われるのが、通貨は一つでも財政は各国ばらばら、という点です。域内で富の偏在が起きても、統一的な財政政策で再分配する力は極めて弱いのです。市場は、そうしたひずみや断層を容赦なく突いてきます。
     しかも、市場が毎日要求するスピードや呼吸に政治がまったく追いつきません。民主主義には時間と手続きがかかります。ユーロ圏は17カ国、EUは27カ国という船頭の多いシステムです。それぞれの国は民主的に議論し決定する。当然、大変な時間がかかる。決定自体が遅れるし、なんとか決定してもどこかの国が足を引っ張る、ということも少なくありません。
     財政的規律を守りモラルハザードを防ぐことを優先するドイツ、オランダ、フィンランドのような国と、そうではない国々との違いも大きい。これは北と南のギャップでもあり、借りたものはきちんと返すべきだというドイツと、まず政府が公的資金を使って主導すべきだというフランスのギャップでもある。市場と政治が合わないこと以上に、EUを引っ張るべきエンジンの中に、すでに深刻な齟齬があるわけです。
     では、EUとユーロが近い将来崩壊してしまうかというと、そうは思えません。ドイツもフランスもほかの加盟国も、EUやユーロの枠がなければ、つまり集まっていなければ、世界の中で今の地位を保てず、影響力を維持できないことを熟知しています。それには強いコンセンサスがあります。
     一方、フィンランドやオランダでは反EU勢力が政党制に食い込んできた。もしドイツでも反EU勢力が強まり、その主張を受け入れなければ政権を作れないとなったら、その時はユーロ崩壊の危機です。でも今のところその気配は見えません。
     当面は迷走と再編を重ねながら、自分たちにとって利点のあるEUとユーロを維持しようとするでしょう。大変な主権侵害ですが、互いの予算をチェックしなければならない。でもそれだけでは済みません。支援を受ける国が成長できるよう、競争力をつけ直す必要もあります。そうしないともっと痛い目にあうというのを、今回の大やけどで知ったわけですから。(聞き手 編集委員・刀祢館正明)

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    遠藤 乾

    遠藤 乾 (えんどう けん)

    北海道大学法学部、法学研究科、公共政策大学院教授(国際政治)

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