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    ガザ侵攻の可能性について―報道ステーション7・11ニュース評論(補足)

    昨日の報道ステーションでのニュース評論は、辺野古での兵舎新設計画のすっぱ抜きとガザへのイスラエル地上軍投入の可能性についての2本でコメントを求められました。当日示されるわりにはどちらも重いテーマですが、後者のテーマについては、前者よりは時間があったとしても、やり取りは3分が限度。テレビに出る以上は、ここに何を込めるかが勝負になりますが、言い足りないことはやはり補足したくなります。

    ポイントは3つ。ひとつは、「局地的なジェノサイド」がパレスチナにおいてすでに進行し、これからもっとひどくなりうるということで、これは冒頭で明瞭に申し上げました。いつぞやツイッターでも紹介しましたが(https://pbs.twimg.com/media/BsKybu0CIAAo26X.jpg)、この根は深く、イスラエルが体系的に元々パレスチナの土地であったところを奪い、いまや小さな区画に閉じ込め、それすらをも体系的に抑圧し、時に殺戮していることは、いくら強調してもし足りない基本的な事実です。

    二つ目に、なぜ今回地上軍投入の可能性まで語られるようになったのか、その背景説明です。一番力を入れたのが、アラブの春の一連のプロセスを通じて生じた、ハマス(率いるガザ自治政府)の孤立です。チュニジア、エジプト、リビア、そしてシリアにまで飛び火した民主化の動きとその後の反動は、ハマスの友人と資金を奪っていったのです。ハマスからすると、エジプトでムスリム同胞団の政権ができたところまでは良かったのかもしれませんが、その政権がひっくり返り、軍部の政権ができると、エジプトとの関係は一気に冷え込みました。ハマスをムスリム同胞団同様のテロ組織扱いしたからで、その結果、ガザとエジプトの間の商品・武器の往来がやせ細ってしまった。加えて、シリアのアサド政権(=シーア派)への応援をイラン(再びシーア派)が求めたのに対し、ハマスが冷淡な態度を取ったために、伝統的にハマスを支援してきたイランは資金提供を止めたといわれています。月に2000万ドルに上る支援が止まったとき、ハマスは自治政府職員の給料の支払いにすら苦労するようになる。この背景説明なしに現状を理解できないと思います。というのも、今回イスラエルが空爆に至る直接のきっかけは、イスラエルの3人のティーンエージャーが殺害され(呼応してパレスチナの少年が(報道によると生きたまま)火に包まれ殺され)、その報復でイスラエルが空爆したのだと広く報道されているのですが、それは(いつぞや呟いたようにhttps://twitter.com/ken_fiore_endo/status/485050453961342977)、いってみれば表層的な「原因」説明でしかなく、むしろ上記のような孤立無援のなかで、ハマスが(おそらくはアラブ世界からの連帯感を取り戻すべく)自家製ロケットで絶望的な攻撃をイスラエル側に仕掛け、それに対して圧倒的な火力でイスラエルが過剰報復しているのが現状だからです。

    最後に、短い時間でしたが、「説明」だけですむ惨状とも思えません。つまり、何らかの打開策があるか、が大事です。しかし、これについては、打ち合わせでも検討していたのですが、正直なところ、即効薬があるとも思えませんでした。アメリカのオバマ大統領は仲介をオファーをだしていますが、そこまでそれを貫徹する意思と能力があるのか、多くが疑問を持っています。それに、アメリカはまだ正式にはハマスをテロ組織扱いなのではないでしょうか。イランはまだハマスとの回路を持っていると思いますが、イスラエルとのつながりはない。そうすると、ハマスとの関係は冷えこんだとはいえ、両者との関係があるエジプトが(何らかの形でアメリカなどに後押しされ)ぎりぎり手打ちを演出するということなのでしょうか。私には、確信がありませんでした。むしろ、ガザの目の前で圧倒的な火力をもって今にも地上軍をいれんばかりのイスラエルに内在する躊躇が、短期的には大事かと思い、その論理を内在的に説明する道を選びました。拙かったかもしれませんが、要は(多くに極右と目され、私もかつて何度もその攻撃的な言動に眉をひそめたことがある)イスラエルのネタニヤフ首相にもジレンマがあり、自身や自国の利益のために地上軍投入を思いとどまる可能性について述べたわけです。それは、一方でハマスのお手製ロケット弾への対応をせざるを得ないけれども、他方でだからと言って、ネタニヤフ氏の観点からして、地上軍投入をすれば問題が解決するわけでないと計算しているのではないか。そこで数百万のパレスチナ人をすべて家宅捜索するわけにもいかず、占領を続けるのにもコストがかかり、といったことです。実際、地上軍投入が懸念された2012年には一度思いとどまっています。このようなかたちで、イスラエルの論理を内在的に理解するという作業は、イスラエル寄りの政治スタンスを取るのとは性質を異にすると私は考えています。

    ちなみに、近年でイスラエルが地上軍を入れたのは、テレビで言及し(400人の死者、1000人の負傷者を出し)た2006年の緊張激化の時に加えて、もっとひどい2008年-09年の時がありました。これは言い損ねてしまったのですが、1000人以上がなくなり、5000人以上が負傷した一大惨事であって、その頃私はイタリアに研究滞在中で、日々そのニュースに接しておりました。婦女子含めた一般市民に白リン弾を使い続ける状況があまりにひどく、ネットで見る日本での報道が低調で、新政権になったばかりの民主党外交が冷淡なのに心底驚き、当時コラムニストを務めていた『読売新聞』コラムで取り上げたり、『週刊金曜日』に掛け合って、イタリアの友人写真ジャーナリストの(目を背けたくなるような)現地報道写真を小さな解説付きで掲載していただいたことがありました。これらについては、
    ・「<ワールドスコープ>不正義も傍観する外交」『読売新聞』2009年11月2日朝刊
     http://lex.juris.hokudai.ac.jp/csdemocracy/ronkou/endo091102.html
    ・ファブリッツィオ・マンフレディーニ「ガザ 白リン弾の悪夢」『週刊金曜日』759号、2009年07月17日、54-55頁
    ・「ガザ、白リン弾、戦争犯罪――あるいは国際政治の進歩について――」『J-Mail 』(北海道大学法学研究科高等法政センターNewsletter)No.30、2009年夏号
     http://www.juris.hokudai.ac.jp/~academia/newsletter/no30/
    を参照ください。

    (了)
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    遠藤 乾

    遠藤 乾 (えんどう けん)

    北海道大学法学部、法学研究科、公共政策大学院教授(国際政治)

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