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    朝日新聞オピニオン面「耕論・ヨーロッパが壊れる」掲載記事

    ユーロ危機に関するインタヴューが記事になりました。
    朝日新聞2011年11月12日朝刊「最大級の危機 でも生き残る」
    (デジタル版 http://digital.asahi.com/20111112/pages/shasetsu.html


     EUの存在自体が問われるような危機です。もうEUはだめだという論者もいるし、ヨーロッパは統合など余計なことをしたという人もいる。でもEUが崩壊するとは思えません。
     危機はギリシャからイタリアに飛び火しました。深刻です。ただこの先、条件のいい国だけで「ミニ・ユーロ圏」を構成するような縮小再編はありえても、ユーロ自体はあらゆる手段を使って維持しようとするはずです。
     第2次大戦後に本格化した欧州統合は、60年以上にわたって常に危機に直面して来ました。危機のたびに迷走し、迷走しながら進んだ。欧州統合の歴史とは偉大な政治家とグランドデザインの歴史ではなく、危機と迷走の歴史です。
     1960年代半ばにはフランスが一時離脱し機能がマヒするという事態が起きました。90年代初めにはソロス率いるヘッジファンドに投機的な攻撃を仕掛けられ、ポンドやリラが離脱するという通貨危機もあった。冷戦終結も大きな危機でした。巨大な統一ドイツを抱えざるを得なくなり、迷走した。今回の危機は統合史の一コマであり、その中の最大級の危機と言えるでしょう。
     EUは「みんなで決めた」というより、「機能すること」で続いてきた政治体です。簡単に言えば、みんなの役に立っている間は、不満は出てこない。
     実際、EUに加盟しユーロになって、豊かになり、他国や市場に対して一国では行使できない影響力を手にした国は多い。でもうまくいかなくなったら、民主的な正統性が薄いぶん、とたんに弱いところが次々出てしまう。
     よく言われるのが、通貨は一つでも財政は各国ばらばら、という点です。域内で富の偏在が起きても、統一的な財政政策で再分配する力は極めて弱いのです。市場は、そうしたひずみや断層を容赦なく突いてきます。
     しかも、市場が毎日要求するスピードや呼吸に政治がまったく追いつきません。民主主義には時間と手続きがかかります。ユーロ圏は17カ国、EUは27カ国という船頭の多いシステムです。それぞれの国は民主的に議論し決定する。当然、大変な時間がかかる。決定自体が遅れるし、なんとか決定してもどこかの国が足を引っ張る、ということも少なくありません。
     財政的規律を守りモラルハザードを防ぐことを優先するドイツ、オランダ、フィンランドのような国と、そうではない国々との違いも大きい。これは北と南のギャップでもあり、借りたものはきちんと返すべきだというドイツと、まず政府が公的資金を使って主導すべきだというフランスのギャップでもある。市場と政治が合わないこと以上に、EUを引っ張るべきエンジンの中に、すでに深刻な齟齬があるわけです。
     では、EUとユーロが近い将来崩壊してしまうかというと、そうは思えません。ドイツもフランスもほかの加盟国も、EUやユーロの枠がなければ、つまり集まっていなければ、世界の中で今の地位を保てず、影響力を維持できないことを熟知しています。それには強いコンセンサスがあります。
     一方、フィンランドやオランダでは反EU勢力が政党制に食い込んできた。もしドイツでも反EU勢力が強まり、その主張を受け入れなければ政権を作れないとなったら、その時はユーロ崩壊の危機です。でも今のところその気配は見えません。
     当面は迷走と再編を重ねながら、自分たちにとって利点のあるEUとユーロを維持しようとするでしょう。大変な主権侵害ですが、互いの予算をチェックしなければならない。でもそれだけでは済みません。支援を受ける国が成長できるよう、競争力をつけ直す必要もあります。そうしないともっと痛い目にあうというのを、今回の大やけどで知ったわけですから。(聞き手 編集委員・刀祢館正明)

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    遠藤 乾

    遠藤 乾 (えんどう けん)

    北海道大学法学部、法学研究科、公共政策大学院教授(国際政治)

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