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    EUの規制力

    先月出た共編著です。下記は、そのあとがきです。

    EUの規制力EUの規制力
    (2012/03)
    遠藤乾/鈴木一人(共編)

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                           あとがき

     ギリシャ発のソブリン危機が経済・政治・社会にまたがるユーロ・EUの実存的危機へと深化してこのかた、EUの話をすると、「タイミング悪いですねえ」などと冷やかされる。とんでもない。逆である。この最悪に見える時期にこそ、EUが静かに行使し続けるグローバルな規制への影響力とその源泉・特質・限界を明らかにしておく必要がある。そう意気込んで編んだのが本書である。
     かつてECSCやEECであった時代から、EUは毀誉褒貶の的となってきた。それは国家間の合意から生じ、常に加盟国との緊張関係を抱えながら、全体として加盟国の役に立つよう進化してきた。1965-66年、1980年代前半、1989-91年、1992-93年、2005年と、断続的に――ときに深刻な――危機に見舞われ、そのたびに「欧州悲観主義」なるものに陥ってきた。危機は統合史の一部ともいえる。
     そうしたEUが織りなす継続と変化。本書はそれを世界標準・規制のポリティクスに絞って検討した。グローバル化に背を向ける議論が横行するなか、「世界」やグローバル・スタンダードはまるで外から「黒船」がやってくるかのように語られる。そうだろうか。ここで取り上げる具体的な考察や事例は、そうした標準や規制が「天から降ってくるもの」でなく「誰かがつくるもの」であることを教えてくれる。その様な人為性の意識の下で、EUが標準や規制を「自らが作りに行く」ものとして戦略的に考えていることをも示している。それは、規模の確保、仲間づくり、国際組織での代表性の確保に始まり、普遍的な仕掛けの中でルール設定をすることで自己利益をうまく保全する知恵を授けてくれるのである。
     日本もまた、環太平洋経済連携協定(TPP)やASEANを中心とした大市場構想など、多国間交渉と向き合わねばならなくなっている。その際、いくら国内市場への依存度が高いからといって、少子高齢化で国内市場の大きな伸びが期待できない中、グローバルな市場に背を向けるわけにもいかない。逆に、貿易自由化によって、国内で築き上げてきた環境や安全関連の規制を撤去してしまうわけにもいかない。こうしたジレンマは、標準や規制を多国間の中で共有することで、ある程度減らして行くことができるのである。EUの事例はここでも効いてくる。
     他方、豊かではあっても低成長の経済がすでに前提となり、軍事大国への野心ももたぬ日本は、世界や地域にどのように影響力やプレゼンスを確保していくのか。ここでもまた、相対的に豊かで成熟し、かねてから軍事に偏重せぬシビリアン・パワーとして位置づけられてきたEUは、市場と離れた分野でも一定の力を確保してきたのである。
     これらのEUイメージは、独仏が和解したという平和的観点からのみ捉えるものとは異なろう。しかし、このイメージは、戦後60年たってヨーロッパでとうに戦争が想像できなくなっても、なぜEUが生きながらえているのかを逆に説明することにつながろう。それは、成熟国家が単独では得られない影響力をジョイントで確保するメカニズムなのである。
     本書では、危機にあるEUを軽視もせず、平和の観点のみからも語ることもせず、標準・規制の分野における実像を追求した。その際、意識して比較的若い研究者をリクルートしながら、日本における多国間規制研究の世代的橋渡しを図ったことも申し添えたい。率直に言って、彼らのパワフルな研究に、もはや若手とは言えぬ世代が刺激を受けたというのが実情に近いだろうが。
     なお本研究は、私が代表を務めた日本学術振興会科学研究費基盤研究B「規制帝国=EUの歴史的形成と展開(2008~11年度)の成果の一部であるとともに、北海道大学グローバルCOEプログラム「多元分散型統御を目指す新世代法政策学」(代表・田村善之教授、2008~12年度)からも支援を受けた。 二人三脚で歩んでくれた同僚の編者や本書への寄稿者はいうまでもなく、このささやかなプロジェクトの完遂に力を貸してくれた人すべてに心からの感謝を捧ぐ。

    雪深まる北国にて
     編者代表 遠藤 乾


    PS なお、これまでの著書は以下で紹介しています。
    http://endoken.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
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    遠藤 乾

    遠藤 乾 (えんどう けん)

    北海道大学法学部、法学研究科、公共政策大学院教授(国際政治)

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